SUZUKI Michiyasu
本学会の理事長を務めております鈴木倫保から、皆様にご挨拶申し上げます。
まず、本学会の沿革についてご説明したいと思います。1990年代初頭、現学会顧問端和夫先生と日本医師会会長で現理事の中川俊男先生らが、本学会を立ち上げられました。当初の目的はくも膜下出血撲滅であり、手段は未破裂脳動脈瘤スクリーニングです。
「修正可能なくも膜下出血リスクを、未破裂脳動脈瘤の予防的外科治療で低減する」と言う、極めて新しい医療のコンセプトを提唱されました。
また、診断の標準化や受診者への適切な対応を含めた、脳ドックガイドラインも作成されました。引き続き、斎藤 勇先生は、安易な脳検診が一時的に散見されるようになった社会情勢を危惧されて、ガイドラインの改定と脳ドック施設認定制度を構築されました。
さらに、渡辺一夫先生は本学会の社会的基盤を確立するために法人化を成し遂げられました。
現在では本邦のくも膜下出血は以前と比較して年間約千例程度の減少が見られるようになりましたが、未破裂動脈瘤の根治術のみならず、脳ドック受診後の血圧管理や禁煙等の効果も大きいと考えられ、発足当初の脳ドックのコンセプトは実証されつつあり、有用性は揺るぎないものとなっております。
これら、くも膜下出血リスク低減の流れと平行して、小林祥泰先生はMRによる脳ドックから、無症候性脳梗塞・大脳白質病変・microbleeds等の所見と脳卒中発症や認知機能低下との関係を明らかにされ、脳ドックのもう一本の柱を確立されました。
片山泰朗先生は、超高齢社会となった日本では認知症例が増加している現実に即し、本会名称のサブタイトル「脳卒中・認知症予防のための医学会」のおまとめに尽力されました。
次に、過去を振り返り、現実を見つめながら、本学会の未来地図を皆様と考えたいと思います。
脳ドックが発足して以来、「脳ドックは有効か?」との疑問は常につきつけられております。
予防医学のcost benefitが盛んに論じられるようになった現在、その回答は避けては通れません。脳ドック受診者に「画像上明らかな未破裂脳動脈瘤無し」と安心感を与えていた30年前とは全く異なり、今日ではきちんと科学的な答えを出す必要があると考えます。
もちろん、世界に冠たる予防医学システムである脳ドックからはエビデンスが次々と出ております。しかし、個人の多様な画像・バイオマーカー診断→個人の発症予測→治療介入という、一連の「先制医療」のフレームで得られる発症リスク低減の定量化エビデンスも必須のように感じます。
幸い、これまで認定された施設群と構築されつつある脳ドックデータベースがありますので、会員の皆様のお力によりデータ精度向上と、悉皆的データ集積がなされれば、世界に比類無い超大型コホートによるビッグデータ取得は可能です。さらに、受診者の複数回リピート率を向上させれば、リスク低減の定量的実証が果たせそうです。これら匿名化されたビッグデータは、様々な疾患における創薬、画像診断、バイオマーカ開発等における医療産業界の新たな財産となることは間違いありませんし、脳ドック受診者に還元される健康情報も格段に増加すると期待しています。
まさに「脳卒中・認知症予防のための医学会」である脳ドック学会の面目躍如です。現在、役員の先生にご相談申し上げて、脳ドックデータベース委員会の再編並びに学術委員会、広報委員会、認定・教育制度委員会を新設し準備を進めております。
会員の皆様と大きな未来地図を共有できればこれに勝る喜びはありません。引き続き、皆様のご協力を何とぞ宜しくお願いいたします。
表は横スクロールします
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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未破裂脳動脈瘤新規検出患者に対するビデオを活用したリスクコミュニケーションの有用性の検証 | 日本医科大学 脳神経外科学 大学院教授 森田明夫 | ¥1,000,000 |
脳ドックにおける認知機能検査実施率向上のための検証研究 | 島根大学医学部 内科学講座 内科学第三 山口修平 | ¥2,000,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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ストレスチェックアプリケーションを用いた脳ドックにおけるストレス関与の研究 | 島根県立中央病院 脳神経外科 部長 井川房夫 | ¥300,000 |
脳ドックにおける認知機能検査普及のための認知機能スクリーニングアプリ(CADi2)のwindows版作成と普及 | 島根大学医学部 内科学講座 内科学第三 山口修平 | ¥1,100,000 |
脳ドック受診者における”Total small vessel disease score”と脳卒中・認知症発症に関する縦断的研究 | 佐賀大学医学部 内科学講座 神経内科 藥師寺祐介 | ¥700,000 |
健常人のMRI上の微小脳出血の人種差に関する国際共同研究 Differences In distribution of Crerebral micrObleeds in Multiethnic (DICOM) - healthy cohorts Meta-analysis - |
佐賀大学医学部 内科学講座 神経内科 藥師寺祐介 | ¥200,000 |
Magnetic Resonance Angiography(MRA)を用いた脳血管年齢算出ソフトの開発(脳ドックデータベースを用いた、動脈硬化・脳動脈瘤の発生および脳卒中発症リスク等と関連する脳血管の形態学的特徴についての検討) | 大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 木谷知樹 | ¥600,000 |
脳ドック受診者の日常栄養摂取状況と脂質・筋組織組成と脳ドック所見の検討 | 聖路加国際大学 聖路加国際病院 脳神経外科 篠田正樹 | ¥300,000 |
脳ドックの結果に対する受診者の意識調査 | 中日新聞社健康保険組合 中日病院 大野正弘 | ¥300,000 |
脳神経疾患による運転手過失交通事故の実態に関する医学的・社会的調査-交通事故発生予防のための脳ドックの需要評価と標準化に向けた試み- | 国際医療福祉大学 熱海病院 脳卒中・神経センター長 神経内科教授 永山正雄 |
¥500,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
---|---|---|
未破裂脳動脈瘤新規検出患者に対するビデオを活用したリスクコミュニケーションの有用性の検証 | 日本医科大学 脳神経外科学 大学院教授 森田明夫 | ¥1,000,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
---|---|---|
クラウドシステムを用いた無症候性脳・脳血管病変の画像診断支援法のフィージビリティスタディ | 岩手医科大学 医歯薬総合研究所 佐々木真理 | ¥500,000 |
MRIにおける脳萎縮・大脳白質病変を総体として定量し、高次機能との相関を検討する | 筑波大学水戸地域医療教育センター 総合病院水戸協同病院 脳神経外科 益子良太 | ¥150,000 |
脳ドックにおいて許容時間内に実施可能な認知機能検査の標準セットに関する検証 | 国立病院機構 肥前精神医療センター 八尾博史 | ¥700,000 |
前向き長期間フォローアップによるCerebral microbleeds(CMBs)の自然歴調査 | 旭川医科大学 内科学講座 循環呼吸神経病態内科学分野 齋藤 司 |
¥300,000 |
MRI髄鞘イメージング「ミエリンマップ」を用いた大脳深部白質病変における髄鞘障害の検討 | 慶應義塾大学医学部 神経内科 髙橋愼一 | ¥400,000 |
脳ドックにおける軽度認知障害(MCI)および識別のための安静時fMRI解析システムの開発 | 島根大学医学部 内科学第三 山口修平 | ¥900,000 |
脳ドックベース研究と住民ベース研究間の背景因子の相違に関する研究 | 佐賀大学医学部 内科学講座神経内科 藥師寺祐介 (研究協力者:肥前精神肥前精神医療センター 生化学研究室 八尾博史) |
¥700,000 |
特発性正常圧水頭症の無症候病変(AVIM)の画像診断ソフトの開発 | 大阪医科大学 脳神経外科・血管内治療科 梶本宜永 | ¥200,000 |
脳ドック受診者の食塩摂取量と脳ドック所見の検討 | 藤井脳神経外科病院 脳神経外科 鈴木博子 | ¥200,000 |
脳神経疾患による運転手過失交通事故の実態に関する医学的・社会的調査-原因病態の評価と脳ドック標準化に向けた試み- | 国際医療福祉大学熱海病院 神経内科 教授・副院長 永山正雄 | ¥200,000 |
自動定量化診断法を用いた無症候性大脳白質病変の大規模コホート調査研究 | 高知検診クリニック 脳ドックセンター/高知工科大学 地域連携機構 朴 啓彰 |
¥750,000 |
1988年 | 日本初の脳ドックを実施(新さっぽろ脳神経外科病院) |
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日本初のMRIによる脳ドックを実施(島根難病研究所) | |
1992年 | 脳の人間ドック研究会が発足 |
日本脳ドック研究会と改称 | |
第1回日本脳ドック研究会を開催(札幌) | |
1995年 | 日本脳ドック学会と改称 |
1997年 | 脳ドックのガイドラインを出版 |
2000年 | 組織改編 初代理事長に端和夫氏(札幌医科大学教授)が就任 |
学会HPを開設 | |
2003年 | 脳ドックのガイドライン2003(改定第2版)を出版 |
2004年 | 第2代理事長に齋藤勇氏(杏林大学名誉教授)が就任 |
2008年 | 脳ドックのガイドライン2008(改定第3版)を出版 |
第3代理事長に渡邊一夫氏(総合南東北病院理事長)が就任 | |
2009年 | 法人設立 一般社団法人日本脳ドック学会と改称 |
2010年 | 脳ドック施設認定制度を開始 第1回認定審査にて134施設が認定 |
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脳ドック標準データベースを公開 | |
2011年 | 学会HPをリニューアル |
2013年 | 第4代理事長に小林祥泰氏(島根大学教授)が就任 |
2014年 | 脳ドックのガイドライン2014(改定第4版)を出版 |
脳ドックのガイドライン検証研究を実施 | |
2015年 | 日本脳ドック学会報を創刊 |
2017年 | 第5代理事長に片山泰朗氏(日本医科大学名誉教授)が就任 |
2018年 | 学会名にサブタイトル「脳卒中・認知症予防のための医学会」を付記 |
2019年 | 脳ドックのガイドライン2019(改定第5版)を出版 |
第6代理事長に鈴木倫保氏(山口大学教授)が就任 | |
2022年 | 学会HPをリニューアル |
名 称 | 一般社団法人日本脳ドック学会 The Japan Brain Dock Society |
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サブタイトル | 脳卒中・認知症予防のための医学会 Academia for Early Prevention of Stroke and Dementia |
代表者 | 理事長 鈴木 倫保 |
事務所 | 〒004-0031 札幌市厚別区上野幌1条2丁目1番10号 医療法人 新さっぽろ脳神経外科病院内 [TEL] 011-891-2500 [FAX] 011-891-5100 メールで問い合わせ |
設立年月 | 1992年3月(法人成立2009年11月12日) |
事業年度 | 4月1日~3月31日 |
第1条 本会は、日本脳ドック学会施設認定委員会(以下「委員会」)と称する。
第2条 委員会は、日本脳ドック学会の事業として、脳ドックの質の向上を促進し、受診者の施設選択に役立つ活動を行うことを目的とする。
第3条 委員会は、第2条の目的を達成するために、脳ドック施設認定事業を行う。認定要綱は別に定める。
第4条 委員は、日本脳ドック学会会員の中から理事長が任命する。
第5条 委員の任期は2年とするが、再任を妨げない。
第6条 委員会は委員の互選により次の役員を選任する。
1)委員長 1名
2)副委員長 1名
第7条 委員長は委員会を代表し、一切の業務を処理する。
2 副委員長は委員長を補佐し、委員長の不在時はその職務を代行する。
第8条 委員長は、毎年1回以上、施設認定委員会等の会議を召集する。また、委員長は必要に応じて会議を招集することができる。
第9条 委員長は、会議の議事録を作成し保存する。
第 10 条 本事業による収入があった場合は、日本脳ドック学会事業にあてる。
第 11 条 この規約に定めのない事項については、必要に応じて委員会で協議し定める。
付則
この規約は、2009年6月から施行する。
学歴、職歴、主な所属学会(役職)、主な研究分野を含む。
理事の記名、押印を要する(理事は 1 名以上)。
総説・原著・著書に限る。多施設研究等では、執筆に関与している場合のみとし、Letter や Comment、学会抄録は入れない。
2.提出資料に不適切な記載・行為があった場合には選考から除外される。
3.立候補者が理事欠員の充当枠数を超えた場合は、充当枠数の連記で投票を行う。
以上
2020年9月1日施行
以上
2021年6月24日施行