TOMIMOTO Hidekazu
要介護状態の原因は、中枢神経疾患が圧倒的に多い事実を皆さんご存じでしょうか?令和元年の高齢者白書によると、男性では24.5%を脳卒中が、女性では19.9%を認知症が占めて、それぞれ最も多い要介護の原因疾患となっています。わが国は今後、2040年に向けて少子高齢化が進展し高齢者の人口のピークを迎えることになりますが、脳卒中と認知症を予防して健康寿命を延伸し、国民の誰もがより長く元気に活躍できる社会を構築する必要があります。
このような状況に鑑みて、日本脳ドック学会は2019年、学会名称に「脳卒中、認知症予防のための医学会; Academia for Early Prevention of Stroke and Dementia」という副題をつけて学会の使命を明確化しています。遡ること1992年、本学会は学会顧問端和夫先生と日本医師会前会長の中川俊男先生らが立ち上げられました。頭部MRI検査の普及に伴って、未破裂動脈瘤がしばしば発見されるようになり、その早期発見と早期介入が当時問題になっていました。その後、脳ドックの知見等をもとに未破裂動脈瘤の自然歴が明かになり、破裂リスクとしての高血圧、喫煙の管理や、根治手術が行われるようになった結果、現在ではクモ膜下出血の年間発症率は減少傾向にあります。その後、時代の変遷とともに、脳ドックは動脈瘤の早期発見や脳卒中予防を目的とする受診者のみならず、もの忘れを心配して受診する利用者の増加に直面するようになりました。令和5年6月、冨本秀和が鈴木倫保前理事長のあとを受けて、第7代の理事長を拝命することになりました。鈴木前理事長の在任2期4年の間には、強いリーダシップのもとに様々な改革が遂行されて、認定・教育制度委員会、学術委員会、COI委員会などいくつかの重要な委員会が設置され、学術団体としての体制整備が完了しました。脳ドック学会は利用者の健康増進に直接的にお役に立つことは素より、少子高齢社会にあって国民の健康寿命の延伸に貢献するという社会的責任も視野に入れて活動を行って参ります。
本学会が認定する脳ドックでは、頭部MRI検査を中心とし脳障害の原因となりうる循環器系をも含めて幅広く検査を行っています。このため、脳卒中や認知症の発症リスクとされる様々な病変を高感度に検出することができます。無症候性脳血管狭窄や無症候性脳梗塞、無症候性脳出血の早期発見には強力なツールとなり、脳ドックで発見された血管病変の危険因子と目される生活習慣に介入して2次予防を行うことで、病気の進展を防ぐことができます。一方、認知症の6割を占めるアルツハイマー病では、記憶に重要な役割をもつ海馬の萎縮を検出できますが、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)では海馬萎縮を目視で指摘するのは困難です。つまり、脳の病気を未病のうちから捕捉して予防介入し治療を行うという戦略は、脳血管病変については有効ですが、未病段階にあるアルツハイマー病を検出するのは難しいと言わざるを得ません。しかし、近年、AIを用いた診断支援システムや脳機能のデジタル検査ツールの進歩と普及は目覚ましいものがあります。将来的にはアルツハイマー病やレビー小体型認知症に至るような早期の変化をMRIで検出できる時代がくることを期待しています。
脳ドックはわが国独自の脳健診システムであり、本学会の使命の一つは脳ドックの健全な発展を支援することです。このため、学会ではおよそ300の良質な脳ドックを学会認定施設として認定し、学会ホームページで公開しています。これらの施設では撮像条件や画像診断の質が定期的にチェックされており、安心して受診することができます。また、今般、施設スタッフについても教育認定制度を立ち上げて、脳ドック認定医、認定指導士を育成して、受診結果の正しい理解の促進や、脳卒中・認知症の予防のためのアドバイスを担っていただくこととなっています。学術面では、脳卒中、認知症予防を目指して全国数か所のメガドックをデータベース協力施設として認定し、年間1万件を目標とするデータベース運営事業の枠組みを構築し、そこから得られた学術情報を国内・外に広く発信していく予定でいます。脳ドックガイドラインは2019年に改定第5版を公開していますが、COI委員会の整備を受けて新たな改訂を行う段階にあります。
本学会は、脳ドックの質の向上・均霑化とともに、会員施設のホームページでの紹介、教育活動などを通して会員ベネフィットの向上を図ってまいります。一般社団法人日本脳ドック学会への皆様の積極的なご参加と、ご支援、ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
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(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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未破裂脳動脈瘤新規検出患者に対するビデオを活用したリスクコミュニケーションの有用性の検証 | 日本医科大学 脳神経外科学 大学院教授 森田明夫 | ¥1,000,000 |
脳ドックにおける認知機能検査実施率向上のための検証研究 | 島根大学医学部 内科学講座 内科学第三 山口修平 | ¥2,000,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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ストレスチェックアプリケーションを用いた脳ドックにおけるストレス関与の研究 | 島根県立中央病院 脳神経外科 部長 井川房夫 | ¥300,000 |
脳ドックにおける認知機能検査普及のための認知機能スクリーニングアプリ(CADi2)のwindows版作成と普及 | 島根大学医学部 内科学講座 内科学第三 山口修平 | ¥1,100,000 |
脳ドック受診者における”Total small vessel disease score”と脳卒中・認知症発症に関する縦断的研究 | 佐賀大学医学部 内科学講座 神経内科 藥師寺祐介 | ¥700,000 |
健常人のMRI上の微小脳出血の人種差に関する国際共同研究 Differences In distribution of Crerebral micrObleeds in Multiethnic (DICOM) - healthy cohorts Meta-analysis - |
佐賀大学医学部 内科学講座 神経内科 藥師寺祐介 | ¥200,000 |
Magnetic Resonance Angiography(MRA)を用いた脳血管年齢算出ソフトの開発(脳ドックデータベースを用いた、動脈硬化・脳動脈瘤の発生および脳卒中発症リスク等と関連する脳血管の形態学的特徴についての検討) | 大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学 木谷知樹 | ¥600,000 |
脳ドック受診者の日常栄養摂取状況と脂質・筋組織組成と脳ドック所見の検討 | 聖路加国際大学 聖路加国際病院 脳神経外科 篠田正樹 | ¥300,000 |
脳ドックの結果に対する受診者の意識調査 | 中日新聞社健康保険組合 中日病院 大野正弘 | ¥300,000 |
脳神経疾患による運転手過失交通事故の実態に関する医学的・社会的調査-交通事故発生予防のための脳ドックの需要評価と標準化に向けた試み- | 国際医療福祉大学 熱海病院 脳卒中・神経センター長 神経内科教授 永山正雄 |
¥500,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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未破裂脳動脈瘤新規検出患者に対するビデオを活用したリスクコミュニケーションの有用性の検証 | 日本医科大学 脳神経外科学 大学院教授 森田明夫 | ¥1,000,000 |
(敬称略)
研究タイトル | 研究代表者 | 決定額 |
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クラウドシステムを用いた無症候性脳・脳血管病変の画像診断支援法のフィージビリティスタディ | 岩手医科大学 医歯薬総合研究所 佐々木真理 | ¥500,000 |
MRIにおける脳萎縮・大脳白質病変を総体として定量し、高次機能との相関を検討する | 筑波大学水戸地域医療教育センター 総合病院水戸協同病院 脳神経外科 益子良太 | ¥150,000 |
脳ドックにおいて許容時間内に実施可能な認知機能検査の標準セットに関する検証 | 国立病院機構 肥前精神医療センター 八尾博史 | ¥700,000 |
前向き長期間フォローアップによるCerebral microbleeds(CMBs)の自然歴調査 | 旭川医科大学 内科学講座 循環呼吸神経病態内科学分野 齋藤 司 |
¥300,000 |
MRI髄鞘イメージング「ミエリンマップ」を用いた大脳深部白質病変における髄鞘障害の検討 | 慶應義塾大学医学部 神経内科 髙橋愼一 | ¥400,000 |
脳ドックにおける軽度認知障害(MCI)および識別のための安静時fMRI解析システムの開発 | 島根大学医学部 内科学第三 山口修平 | ¥900,000 |
脳ドックベース研究と住民ベース研究間の背景因子の相違に関する研究 | 佐賀大学医学部 内科学講座神経内科 藥師寺祐介 (研究協力者:肥前精神肥前精神医療センター 生化学研究室 八尾博史) |
¥700,000 |
特発性正常圧水頭症の無症候病変(AVIM)の画像診断ソフトの開発 | 大阪医科大学 脳神経外科・血管内治療科 梶本宜永 | ¥200,000 |
脳ドック受診者の食塩摂取量と脳ドック所見の検討 | 藤井脳神経外科病院 脳神経外科 鈴木博子 | ¥200,000 |
脳神経疾患による運転手過失交通事故の実態に関する医学的・社会的調査-原因病態の評価と脳ドック標準化に向けた試み- | 国際医療福祉大学熱海病院 神経内科 教授・副院長 永山正雄 | ¥200,000 |
自動定量化診断法を用いた無症候性大脳白質病変の大規模コホート調査研究 | 高知検診クリニック 脳ドックセンター/高知工科大学 地域連携機構 朴 啓彰 |
¥750,000 |
1988年 | 日本初の脳ドックを実施(新さっぽろ脳神経外科病院) |
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日本初のMRIによる脳ドックを実施(島根難病研究所) | |
1992年 | 脳の人間ドック研究会が発足 |
日本脳ドック研究会と改称 | |
第1回日本脳ドック研究会を開催(札幌) | |
1995年 | 日本脳ドック学会と改称 |
1997年 | 脳ドックのガイドラインを出版 |
2000年 | 組織改編 初代理事長に端和夫氏(札幌医科大学教授)が就任 |
学会HPを開設 | |
2003年 | 脳ドックのガイドライン2003(改定第2版)を出版 |
2004年 | 第2代理事長に齋藤勇氏(杏林大学名誉教授)が就任 |
2008年 | 脳ドックのガイドライン2008(改定第3版)を出版 |
第3代理事長に渡邊一夫氏(総合南東北病院理事長)が就任 | |
2009年 | 法人設立 一般社団法人日本脳ドック学会と改称 |
2010年 | 脳ドック施設認定制度を開始 第1回認定審査にて134施設が認定 |
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脳ドック標準データベースを公開 | |
2011年 | 学会HPをリニューアル |
2013年 | 第4代理事長に小林祥泰氏(島根大学教授)が就任 |
2014年 | 脳ドックのガイドライン2014(改定第4版)を出版 |
脳ドックのガイドライン検証研究を実施 | |
2015年 | 日本脳ドック学会報を創刊 |
2017年 | 第5代理事長に片山泰朗氏(日本医科大学名誉教授)が就任 |
2018年 | 学会名にサブタイトル「脳卒中・認知症予防のための医学会」を付記 |
2019年 | 脳ドックのガイドライン2019(改定第5版)を出版 |
第6代理事長に鈴木倫保氏(山口大学教授)が就任 | |
2022年 | 学会HPをリニューアル |
2023年 | 第7代理事長に冨本秀和氏(済生会明和病院院長・三重大学特定教授)が就任 |
名 称 | 一般社団法人日本脳ドック学会 The Japan Brain Dock Society |
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サブタイトル | 脳卒中・認知症予防のための医学会 Academia for Early Prevention of Stroke and Dementia |
代表者 | 理事長 冨本 秀和 |
事務所 | 〒004-0051 北海道札幌市厚別区厚別中央1条6丁目2番10号 医療法人 脳神経研究センター 新さっぽろ脳神経外科病院 [TEL] 011-891-2500 [FAX] 011-891-5100 メールで問い合わせ |
設立年月 | 1992年3月(法人成立2009年11月12日) |
事業年度 | 4月1日~3月31日 |
第1条 本会は、日本脳ドック学会施設認定委員会(以下「委員会」)と称する。
第2条 委員会は、日本脳ドック学会の事業として、脳ドックの質の向上を促進し、受診者の施設選択に役立つ活動を行うことを目的とする。
第3条 委員会は、第2条の目的を達成するために、脳ドック施設認定事業を行う。認定要綱は別に定める。
第4条 委員は、日本脳ドック学会会員の中から理事長が任命する。
第5条 委員の任期は2年とするが、再任を妨げない。
第6条 委員会は委員の互選により次の役員を選任する。
1)委員長 1名
2)副委員長 1名
第7条 委員長は委員会を代表し、一切の業務を処理する。
2 副委員長は委員長を補佐し、委員長の不在時はその職務を代行する。
第8条 委員長は、毎年1回以上、施設認定委員会等の会議を召集する。また、委員長は必要に応じて会議を招集することができる。
第9条 委員長は、会議の議事録を作成し保存する。
第 10 条 本事業による収入があった場合は、日本脳ドック学会事業にあてる。
第 11 条 この規約に定めのない事項については、必要に応じて委員会で協議し定める。
付則
この規約は、2009年6月から施行する。
学歴、職歴、主な所属学会(役職)、主な研究分野を含む。
理事の記名、押印を要する(理事は 1 名以上)。
総説・原著・著書に限る。多施設研究等では、執筆に関与している場合のみとし、Letter や Comment、学会抄録は入れない。
2.提出資料に不適切な記載・行為があった場合には選考から除外される。
3.立候補者が理事欠員の充当枠数を超えた場合は、充当枠数の連記で投票を行う。
以上
2020年9月1日施行
以上
2021年6月24日施行
以上
2023年6月22日施行